住宅は生涯最大の買い物のため、ほとんどの世帯は30年という長期の住宅ローンを組んで取得します。
この長期の住宅ローンを組んで家を買うことは、住宅購入の現場ではあたりまえの行動ですが、長引くコロナ禍すこし立ち止まって考えてみたいと思います。
住宅購入を検討するのは30~40代の子育て世帯が中心ですが、その世代の親御さんの時代と異なるのが住宅ローン返済の原資となる給料です。
両親の時代は高度経済成長期と呼ばれ、日本経済は右肩上がりの成長のさなかでしたので、雇用も安定し給料も上昇し続けました。
コロナ禍の'20年の給料は2年連続のマイナスの年間433万円。'00年の461万円から28万円も減っています。賞与は65万円でリーマンショック後以来の大幅減。
‘20年の収入減はコロナによるものですが、日本経済は20年におよぶデフレにより給料はほとんど増えていません。
収入が増えない一方、家計の支出は子どもの進学にともない増えていくので家計の収支は悪化します。
返済期間が30年前後と長い住宅ローンは、毎月安定した収入があることが前提なので、収入減や収支の赤字は返済が滞り資金計画が狂ってしまいます。
こうした収入が思うように増えず定年を迎えた世帯も増えており、ローンの残債に退職金を充てざるをえず老後の生活資金を圧迫します。
上がらない給料に対して、土地や建築費の上昇により住宅価格は右肩上がりです。
住宅価格の上昇は、家計に重くのしかかってきています。
毎月のローン返済額を月収で割る「返済負担率」は25%が上限の目安ですが、25%以上の割合が増加し平均値が22.2%と前年度から0.5%上昇しています。
住宅予算のひとつの目安が年収の5倍以内ですが、直近の住宅価格の全国平均は年収の5.5〜7.4倍と大きく上回っています。
住宅費の割合が増えると家計の他の支出が圧迫されます。収入の25%、4分の1が約30年におよび住宅費にもっていかれるので、人生を楽しむための支出は限られます。
長期の返済途中、失業や病気による収入減、離婚ほかリスクもあります。
給料は増えていないのに住宅価格は上がっている今日、従来からの長期の住宅ローンを組んで住宅取得することは、購入前にきっちり資金計画、ライフプランを立てることが今後より重要になってきます。